演習問題

農家X氏が育成者権者A氏に、登録品種aの穂木を譲渡を申し入れた(a品種の苗木は市販されていなかった)。

A氏がこれを快諾した。そして(何本とか何芽とか)数を特定せずに剪定枝数本をX氏に渡した。

ところで、これを知ったY氏がX氏に対して、1本で良いから分けてほしいと頼んだとする。このことをA氏につげることなく、X氏はA氏からもらった剪定枝のうち1本を、Y氏に剪定枝を渡した。

X氏からY氏への譲渡は、種苗法に違反するか?

 

 

回答案

種苗法には違反しない。

A氏からX氏に譲渡された穂木の本数と、X氏からY氏へ再譲渡されたのちにX氏の手元に残る穂木の数プラスY氏に渡った穂木の数は、変わらない。

苗木ないし穂木の数が変わらない形での再譲渡は、育成者権者の許諾なしに行える。

 

解説

苗木が広く市販されている場合は別として、育成者権者が農家から依頼を受けて、登録品種の枝を譲渡することはよくあることだろうと思う。

剪定して余っているのだから、適当に持って行って良いよと言ってしまいそうなことである。譲渡した相手が知り合いであったり、熱心な農家であれば、断りきれないということもあるだろう。

譲渡した相手(X氏)を信頼して渡したのであって、他には広めてくれないでほしいという思いがあったとしても、そうしたことまではいちいち言わないかもしれない。

しかし、譲渡した相手X氏がさらに譲渡を求められた(Y氏)場合、育成者権者の思いとは別に、最初に譲渡を受けた範囲であればX氏の思うままに、登録品種を広めてしまうことができる。

結局、登録品種を必要以上に広めたくないのであれば、譲渡する芽数を明記し、X氏が再譲渡を禁止することを明確かつ厳密に記載した契約を取り交わしてから、譲渡するべきだということになる。